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2012年2月17日 (金)

アリソン・マードックさんインタビュー(前編)~音楽ライブ・ミートアップ「シリコン・バレー・ロックス」

音楽ライブ×ミートアップ「シリコン・バレー・ロックス」

 サンフランシスコの北部、海の近くに、そのクラブはあった。2011年の12月1日、DNA Loungeと名づけられたクラブスペースには、400人を超える人たちが集まっていた。入場待ちの列は途切れることを知らず、整列をうながすスタッフの声が会場の外に響き渡る。壁の向こうから、大きな音が聞こえる。ドラムの音、ベースの低音、そしてシャウト……ステージでバンドの奏でている音だ。

 会場に入ると、ステージではバンドがオリジナルのロック・ミュージックを奏で、フロアではたくさんの人たちが踊ったり、談笑したりしていた。アメリカのライブハウスと聞いて日本人が想像するような危険な空気や猥雑な雰囲気は、まったくない。平和で、暖かい空気と、熱いロックンロールが混ざり合って、会場を包み込んでいた。

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DNA Lounge外観

 「シリコン・バレー・ロックス(Silicon Valley Rocks)」……それが、このイベントの名前。普通の音楽ライブとは、ちょっと違うイベントだ。実は、ステージに上がっているバンドは、シリコンバレーやサンフランシスコ、つまり西海岸ベイエリアで働いている、ベンチャー企業――スタートアップや、テック企業や、ベンチャーキャピタルの社員なのだ。ステージに上がったメンバーの会社名をあげてみると、そのライブの特異性は一目瞭然。Facebook、Google、Adobe、Dropbox……よくよく会場を見渡してみると、名刺を交換している人がたくさんいる。何人かを捕まえて話をきいてみると、彼らは、やはりスタートアップのスタッフであり、ベンチャーキャピタルのスタッフだった。

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 さっきまでステージに上がっていたアーティストたちが、フロアに下りてきて、名刺交換や自己紹介をしている。音楽の話だけでなく、ビジネスの話も飛び交う。客層は、まるで、ベイエリアで開催されているネットワーキングパーティや、ピッチイベントのようだった。「イベントは一方通行のコミュニケーションであり、ミートアップはコミュニティである」……スコット・ハイファマンの言うミートアップの定義に即するならば、このイベントは、音楽ライブであると同時に、ミートアップでもある。ミートアップの新しい形が、そこには確かにあった。

 アリソン・マードック(Alison Murdock 以下、アリソン)、シリコン・バレー・ロックスを立ち上げたオーガナイザーが、フロアで私を見つけて、話しかける。「いい取材はできている?」 私は答えた。「もちろん、こんなピースフルな音楽ライブには、初めて参加したよ!」

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アリソン・マードック(Alison Murdock)


音楽教育を育てることが、音楽文化を豊かにすることにつながるって信じているの

 アリソンは、GigaOMという、サンフランシスコに拠点を持つオンラインメディア企業のマーケティング部門の責任者だ。彼女は、4年前に、プライベートでシリコン・バレー・ロックスを立ち上げ、1年に1回、年末にサンフランシスコで、このユニークな音楽ミートアップを続けている。

 「昔、音楽をやってたんだけど、しばらく遠ざかったの。けど、4年前に、楽器をまたさわりはじめたのよ。それで、再開したときに、音楽仲間と話をしてて、シリコンバレーにはたくさんのミュージシャンがいるということに気づいたの。たくさんのギタリスト、ドラマー、ベーシストがいるってね。ちなみに私は、ベーシストなのよ。」

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 技術者や科学者は、プレイが上手くて、理論についても詳しいことが多いとアリソンは言う。アリソンの会社は、テック系のイベントも開催していて、技術系コミュニティにネットワークを持っていた。

 「テック・コミュニティにはネットワークがあるのだけど、そのときは、趣味の世界にはネットワークがなかったの。同じくらいたくさんの人がいるのにね。それで、思ったの。音楽で、イベントをやろうって!」

 彼女がイベントを開催するにあたり、決めたことが1つあった。それは、イベントでお金を儲けるのはやめる、ということだ。彼女は、全ての収益を、ファンド支援に充てることに決めた。それは、音楽学校のボードメンバーが立ち上げた、音楽教育プログラムをサポートするためのファンドだった。

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 「シリコン・バレー・ロックスは、ファンドレーザーイベントなの。」

 ファンドレーザーイベントとは、チャリティイベントの一種で、主に教育機関などへの寄付の形として実施されることが多い。例えば、アメリカでは、学校が主催でバザーなどを開催し、その収益を、学校運営のためのファンドに充当することがある。アリソンは、音楽教育支援の必要性について、次のように語る。

 「この国にはね、たくさんの音楽学校があるんだけど、学校への補助はどんどん予算から削られているのよ。だから、音楽教育をオーガナイズする人たちは、ファンドを作って、資金をつのり、それを学校に還元しているの。私は、音楽教育を育てることが、音楽文化を豊かにすることにつながるって信じているの。私は音楽が好きだし、なんとか、音楽のためになることをしたかったのよ。」

 イベントを開催しようとすると、彼女の考えに同調する、たくさんの音楽を愛する仲間が集まった。この日司会進行を勤めた女性は、ラジオ局に勤めるプロのDJだった。ボランティアは総勢20名弱。彼女は、2人のステージマネージャーと共に、このボランティアをまとめあげ、自身もボランティアでイベントを運営している。

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MCは本職のラジオDJがボランティアで務めた

 集まるのは、ボランティアだけではない。スポンサーや参加するバンドのメンバーも、アリソンの考えに共感し、集まっていった。「イベントをチャリティーにすることの利点は、私たちの考えに賛同する音楽に関わる人たちをどんどん巻き込めることね。【それはいい考えだ!協力するよ!】ってね。もちろん、スポンサーも含めて。だから、ちゃんと収益が上がるのよ。」

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 毎年、15前後のバンドが出演を希望し、30,000ドルの収益が上がる。収益はチケット代や、スポンサー、そして、会場で実施されているチャリティオークションからあがり、その収益は全て、音楽教育を支えるための、ファンドに寄付されている。

(後編に続く)

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