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2012年2月18日 (土)

アリソン・マードックさんインタビュー(後編)~イベントを通じて、文化を豊かにするということ。

ゴールは、参加者がリラックスできる会場を作ること

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 会場には400人の人々が集まる。その多くは、ダイレクトメールや、ツイッター、Facebook、Plancast、eventbriteなどのソーシャルメディアを介して、イベントのことを知る。もちろん、バンド関係者を中心とした口コミも、集客のための大事なポイントになる。

 The Barricades100%Allen MaskIngar Brown & the Future FunkCoverflowfeedbombOpen Source BandFox Picnicという8つのバンドやグループが、2011年のシリコン・バレー・ロックスのステージに上がった。例えばAllen Maskは、Googleに勤める若い2人によるヒップホップユニット。Open Source Bandは、この日のイベントのために結成された、メンバーの年齢層も様々なバンドだ。特筆すべきは、freebombというバンド。

 「freebombにはね、マーク・ザッカーバーグの妹・ランディが参加しているのよ。Facebookの社員もメンバーなの。」

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ランディ・ザッカーバーグさん。かの、マーク・ザッカーバーグの妹だ。

 
 他にも、西海岸特有のパワーポップを演奏するバンドもあれば、往年の名曲をカバーしてフロアを盛り上げるコピーバンドもいた。ジャンルも様々で、年齢層も様々なステージ。それと重なるように、フロアの年齢層や客層も、また様々だった。スーツを着た人もいれば、Tシャツを着た若者もいた。人種もミックスされていて、音楽を媒介にした、フラットな空間が作られていた。

 「それも狙いなの」と彼女は言う。「ブッキングは、持っていチャネルを使うの。募集をかけて情報を流すと、メールやフォームで応募がくる。それに、バンドの情報はよく入ってくるしね。例えば、Googleに素晴らしいラッパーが働いているという情報が口コミで流れてくる。Allen Maskのことね。そういうバンドを私は、スタイルやジャンルが違うバンドをあえて選んで招待するの。毎年、やってくるお客さんが入れ替わるように、バンドも入れ替えているわ。」

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Googleの若手社員2人による本格ヒップホップユニット「Allen Mask」

 
 アリソンは、ブッキングの際に、若いバンドと、音楽性も違うベテランのバンドを混ぜている。結果として、それぞれのバンドのファンのグループが会場に集まるし、会場の客層はうまい具合にミックスされる。若いバンドはイベントに対して献身的に協力してくれるし、ベテランのバンドは流行曲をコピーして、ステージを盛り上げてくれる。シリコン・バレー・ロックスは、それぞれのバンドがそれぞれの役割を果たすことで、参加者がリラックスして楽しめる空間を作ることに成功している。

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 「私たちのゴールは」と彼女ははっきりと私に言う。「参加者がリラックスできる会場を作ることなのよ。音楽があるから、普通のネットワーキングイベントより、リラックスしてみんな交流できると思わない?」

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ネットワーキングが行われているフロア。

 
イベントをすることで音楽教育を助ける。それは素晴らしいことだと思わない?

 音楽を媒介にし、ファンドレーザーイベントという形にすることで、イベントは、音楽を愛する人たちで埋まっている。それは、ステージやフロアのみならず、スポンサーについても同様である。

 「スポンサーは12社ついたわ。スポンサーが、スポンサードしてくれる理由は2つあるの。1つは、彼らが、音楽を愛していること。バンドのパフォーマンスが好きで、イベントが好きで、オーディエンスが好きだということ。そしてもう1つは、リクルーティングよ。」

 会場には、たくさんの優秀な技術者が集まる。スポンサー企業は、彼らに自社サービスをアピールし、そして直接コンタクトできる。トップスポンサーの天気情報配信サイト・ウェザーアンダーグランド社は、この日、「誰でもバンドのメンバーになれる」という触れ込みの記念撮影ブースを設けて、無料で来場者に開放していた。ブースにはひっきりなしにフロアの人々が訪れ、サービスの紹介や、ネットワーキングがブースの近くで始まっていた。彼らの目的は、サービスの認知向上と、有能な技術者の獲得だという。ベイエリアでは、有能な人材の確保を狙うスタートアップ企業が、多くのイベントに協賛し、来場者との接点を広げているという。

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ウェザー・アンダーグラウンド社の記念撮影ブース。天気予報でおなじみの合成技術を使い、背景がライブステージの写真と合成されて、自分がステージで演奏しているかのような記念写真がとれる。

 
 では、イベントをボランティアでオーガナイズする側のメリットはあるのだろうか? 単刀直入にアリソンに聞いて見ると、彼女ははっきりと答えた。「もちろん。」

 「3、4年間、私はコンサルタントとして働いているんだけど、それとは別のアイデンティティをシリコン・バレー・ロックスをやることで確立できたのよ。それに、ネットワークづくりに、イベントのオーガナイジングはとても役立つの。例えば名の知れたバンドとか、とても名の知れた人……【ハイ・プロフィール】な人たちと、同じレベルでつながることができるの。楽器もそう。バンドはネットワーキングにとても有効なのよ。あなたドラム弾けるの? 私はベースが弾けるの……ってね。あなたはキーボードが弾けるのよね? きっと私より上手よ(笑)」

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 けどそれだけじゃないわ、と、アリソンは、彼女がイベントを続けるモチベーションについて語る。

 「さっきも言ったけど、私は音楽教育を育てることで、音楽文化が豊かになっていくと信じているの。音楽学校は、アメリカだけではなく、ヨーロッパや日本にも増えているでしょう? 子供が受身になるのではなく、自分で考えていろいろなコンセプトを元に受けたい教育を選べて続けられる環境ができるのは、子供たちの創造性にとってとても大事なことだと思うの。例えば、読み書きが苦手でも、実はとても素晴らしいミュージシャンになれる子だったいるわけじゃない? 音楽教育を支え続けることが、大事だと私は思っている。私には、他にお金を作る方法がない。だけど、イベントをすることで、音楽教育を助けることができるのよ。それは、とても素晴らしいことだと思わない?」

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 今後のシリコン・バレー・ロックスをどうしていきたいかと聞くと、彼女は、笑いながら「正直言うと、先のことなんて、分からないわ」と前置きしつつ、ゆっくりと語り始めた。

 「バンドに限らず、他の音楽ジャンルのイベントにもチャレンジしたい。アコースティックなシンガーソングライターのイベントとかね。私は、技術系の会社と、ミュージシャンのネットワークを作りたいのよ。誰がどんな楽器を、音楽をやっていて、どこで働いているかってね。働きながら音楽をやる人は、アメリカでもそこまで多くはないの。学校を卒業したら、楽器もやめちゃう……とかね。だけど、音楽をやっている人は、少なくもないし、それはとても素晴らしいことだと思うの。みんな一生懸命働くし、私もそう。だけど音楽にせよスポーツにせよ、趣味があると、日常生活を楽しくできるじゃない? 私の場合はね、イベントをやることで、音楽についてより深く知ることができたのが、とても嬉しかったのよ!」

 音楽が、人と人をつなぐ線になる。アリソンの信念で出来上がったシリコン・バレー・ロックスは、そんなことを改めて実感させてくれる。彼女は技術者ではない。しかし、ベイエリアの広大な技術者のコミュニティの中で、人々の生活を、文化を、より豊かにする技術を、発明できたのかもしれない。

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(インタビュー、構成、撮影/河原あず 東京カルチャーカルチャー

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