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2012年3月21日 (水)

「ブクブク交換 in LA」ライブレポート~国境も世代も越えていく日本発の本の交換ミートアップ(2011/11/27開催@Tustin, California)

世界に広がる本の交換イベント「ブクブク交換」

ブクブク交換というイベントをご存知だろうか?東京カルチャーカルチャーのプロデューサー、テリー植田が考案した本の交換イベントだ。参加者は、テーマにあった本を会場に持参し、その本を参加者に向けて紹介する。持ってきた本の数だけ、気になる本を持ち帰れる仕組みになっている。本には、栞がわりに名刺をはさむのがルールで、本を通じて自然と人と出合える/ネットワーキングができる仕組みになっている。

もちろん、発祥の地である東京・お台場の東京カルチャーカルチャーでも毎月のようにブクブク交換は開催されている。また、公式のサイトを作り「みなさん、自由にブクブク交換をやってください!」とPR活動も行っている。東京はもちろんのこと、札幌、山形、大阪、広島、横浜、金沢、大宮などの国内主要都市でも開催されている。中には、電車を借り切ってブクブク交換を行うグループもあり、それぞれがそれぞれの趣向で「本の交換会」を楽しんでいる。

そして、ブクブク交換は、日本国内に限らず、世界各地で開催されている。例えば、アメリカのロサンゼルス。

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ライターであり、着物スタイリストとしても活動している君野倫子さん
は、2ヵ月に1回のペースで、ロサンゼルスでブクブク交換を開催している。ブクブク交換のことは、発案者のテリー植田から聞いて知った。インタビューでも取り上げたとおり、君野さんは、東京カルチャーカルチャーで市川染五郎さんの歌舞伎イベントをオーガナイズしている。イベント制作中にロサンゼルスに引っ越すことになった折、テリー植田からなんとなく言われたという。

「君野さん、ロサンゼルスでぜひ、ブクブク交換をやって下さいねぇ。」

「フィレンツェでもやってるし、まあ、できるかなって思ったんです」と君野さん。「けどね、実際やるには、引っ越してから1年かかりました。」

引っ越してから1年経とうかという頃、ブクブク交換をやってみたいんだけど、という話を知人にしてみたところ、何人か「参加したい」と反応したので、始めてみたという。そして第1回が終わった直後、参加者からこういわれたという。「次はいつやるの?」本の貸し借りが発生したので、読み終わる時間を見積もって君野さんは答えた。「じゃあ、2ヶ月後くらいで。」以降、2ヶ月に1回のペースで、君野さんは、ブクブク交換を、ロサンゼルス各地で開催している。

第3回ブクブク交換 in LA

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2011年の11月27日、タスティンという街にある参加者の個人宅で、3回目のブクブク交換 in LAが開催された。リビングに集まった人数は、10名弱で、自分以外は全て女性。中にはお子さんを連れて参加される方も。お茶菓子が出され、お茶を飲みながらのブクブク交換は、とてもリラックスした雰囲気でスタートした。

広大なロサンゼルスでも、違う地域で毎回ブクブク交換は開催されている。最初のブクブク交換はレドンドビーチ、2回目はカルバーシティで開催。私も参加した4回目のブクブク交換は、ダウンタウンにある公共図書館の会議室で開催された。「うちの近くでやってほしいっていうリクエストが多いんです。ロサンゼルスは広いので、近くにいないと参加できない方もいるんです。だから、毎回、開催場所を変えています。」

どういう方が参加されるかと君野さんに聞いてみると「日本人の、女性がほとんどです。けど、日系企業の駐在員の奥様方のコミュニティともちょっと違ってて、自分で事業を持ってたり、ものを作ってたりする方が多いんです。」不動産事業を営んでいる方、お菓子の製造販売をしている方、ヒーリングを生業にしている方、図書館ボランティアの方など、バックグラウンドも本当に様々。

東京カルチャーカルチャーとは違う雰囲気で、本の傾向もやはり違う。とても新鮮な気分で、ブクブク交換の輪に加わった。

今回のブクブク交換のテーマは「何度も読み返す本」「旅のおとも」「あなたの名作漫画」

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最初に主婦の方から紹介されたのは「親の品格」。早速、母親ならではのチョイス。「何度でも読み返す本です。『親ゆえの闇』にさいなまれたときに読みます。日本的な、当たり前のことを書いてて、いろいろなことを再確認できるんです。」ほとんどの参加者が母親だけあって、大きくうなずく人が多数。

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原田宗典さんのエッセイ「わがモノたち」を紹介するのは、ロサンゼルスの公共図書館でボランティアをしている女性。「軽く読めるのが、旅のお供にいいですよ。けど、ビーチとかで読んだりすると、絶対に吹き出しちゃうので、気をつけてくださいね!」

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斎藤一人さんの「成功する人、腐る人」を紹介したミヤコさんの趣味は「発酵」「ビールや味噌を作っているんです。この本は、酒造の人が斎藤さんと出逢って、いいお酒を作ることに成功したというエピソードがかかれた本です。このお酒、飲みたくなりますねぇ。」としみじみ。

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主催した君野さんが紹介するのは、ちくま文庫の「大正時代の身の上相談」「大正時代に新聞に掲載されていた身の上相談をまとめたものです。悩みって、時代が変わっても、変わらないものなんだなって思いますよ。『接吻されて汚れた私、どうしたらいいの?』とか、『女癖の悪い夫に悩んでいる』とか『文学の道に行きたいが親に反対されている。どうしたらいいか』とか……ね。時代を感じますが、中には『みかんを一度に20個食べる夫に悩んでます』ていう相談もあって、なんだか笑えるんですよ。」

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親子連れで参加した人もいる。お子さんも、お気に入りの本を英語で紹介。本への想いは、国境も世代も越える。

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たくさんの本が紹介された。手書きの紹介ポップも、とてもユニーク。中には英語の本も。

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自己啓発系から、笑える本から、小説まで。幅広いラインナップ。

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「子育て」に関わるテーマの本が数多く揃ったのも、女性の多いブクブク交換ならでは。

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紹介が終わったら、いよいよ本の交換タイム。ただ、ここがちょっと日本で開催されるブクブク交換と違う。日本だと並んでる本を、自分が持参した数だけ持ち帰れるため、本の争奪戦が始まるのだが、ロサンゼルスでは、気になる本があったら、付箋に自分の名前を書き込んでいく。なぜかと聞くと「アメリカでは日本語の本は貴重だから、交換しないで、貸し借りして回すんです。」という回答。

実は、この「本のまわし読み」が、参加者のコミュニティづくりに一役買っている。ブクブク交換の参加者同士が仲良くなり、ブクブク交換の時間とは別に時間を作って、本の貸し借りがてらお茶をすることも多いのだとか。

君野さんが説明してくれた。「読み終わったら、ブクブク交換で持ち帰った本を次の番の人に回すじゃないですか。郵送するという手もあるんだろうけど、やっぱり、逢って、お茶をして、本を交換して帰るっていうのが多いんですよ。素敵なコミュニケーションだなって、思います。そういう、他人との出逢い方って、ロサンゼルスではなかなかないんですよね。」

ロサンゼルスは、「広すぎる」と君野さんは言う。広すぎるから、コミュニティは分散する。車社会でもある。用事を作らないと、他の人たちとコミュニケーションをとる機会もできない。「文化的な匂いのするイベントも、実はロスではあまり多くないんです。だから、皆さん、ブクブク交換みたいな集まりに、惹かれるのかもしれないですね。」

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「そういえば名刺もらってなかった!」と名刺交換が始まる。仕事を持っていたり、個人の活動をされている方が参加者には多く、アメリカでは、仕事や個人の活動を成功させる鍵は「ネットワーキング(人々との繋がり)」にあるという考えが強い。日本人は一般的にパーティなどでのネットワーキングが不得手な人が多いように思えるが(知らない人同士で自己アピールをするのはシャイな日本人には難しいことかもしれないし、言語の壁もある)本を媒介にすることで、スムーズに自己紹介ができるのは、ブクブク交換の強みかもしれない。

本の貸し借りの順番が決まった後も、フリートークは止まらない。電子書籍事情、中国事情、教育事情などなど……仕事の話から他愛のない話題まで、色々な話題が飛び交う。本の交換を通じてお互いの距離感が縮まっているから、自然と話も弾む。

日本発の本好きによる本好きのためのミートアップ「ブクブク交換」

ブクブク交換は、自らのイベントを示すのに、特に「ミートアップ」という表現は使っていない。しかし、Meetup.comのCEO スコット・ハイファマン氏の言う定義に基づくなら、ブクブク交換は、純然たるミートアップである。

「人々の日常生活を助ける、参加者同士がコミュニケーションを取り合う集まり、それがミートアップなのです。」

ブクブク交換は、1人の本好きのイベントプロデューサーが編み出した、とてもユニークなミートアップだと、異国で参加してみて実感する。会場によって、開催される場所によってカラーも、参加者の層も、スタイルも変わる。だけど、この集まりがまとう文化的な雰囲気はどこで参加しても変わらない。何より、自分のお気に入りの本について語る人々の姿は、とても生き生きしている。参加者同士が、自然と仲良くなっていくのも、ブクブク交換の特徴だが、これもどこの地域で参加しても見られる現象だ。

日本発の本の交換ミートアップ「ブクブク交換」。サンフランシスコにいるとあるアメリカ人のイベントオーガナイザーにこの話をしたら「それは面白い、やりたいね」と即答された。国境を越えたブクブク交換が、今度は日本人コミュニティの外を出て、外国人のコミュニティで波及する日も、遠くないのかもしれない。

「日系とかアメリカ系とか関係なく、自分のやりたいことをやっている、そういう人がブクブク交換に参加してくれるんです。私、そういう人、すごい好きなんです。こんな人、日本にはいないなあっていう人……好きだから、これをやっているんですっていう人。そういう人から得るものって多いんですよ。自分が、こうだって思い込んでたことが、そうじゃないんだよなって分かることがあるのが、すごい面白いですね。」

君野さんの言葉が印象に残る。ブクブク交換は、世界中で、人々の新しい出会いと、新しい「気づき」を支えているのだ。

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(執筆、撮影 河原あず/東京カルチャーカルチャー

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